■ 雑文.11:鋼鉄銃娘製作記 III (1998.11.29) ■

〜 ガンにゃんを創った男達 〜

鋼鉄銃娘誕生
 歯車が噛み合い、音を立てて回り始めた。
 スタジオ玄米茶の未だ内に秘められたままの実力を、PC版スチガンという無謀とも思える挑戦を通じて発揮する。本当にそんなことが可能であるのか…半信半疑でありながらも、躊躇している暇はなかった。与えられた時間はわずかしかない。年末までに全ての作業を終えなくてはならないのだ。
 今回も、役割分担ははっきりしていた。まずプログラミングを受け持つE本が、全体の進行調整役も引き受けた。BGM・効果音はS藤が担当。ゲーム画面内のCGは、オブジェクトキャラのドット画をY本が、背景データをN川が受け持った。そして主人公キャラの設定をK本が描き下ろし、Y口の手によりCG原画が描き起こされた。その他にも、マニュアル挿絵や声の出演等、巻き込まれた後輩達の力までがいたるところで見え隠れしている。

 ここで、主人公キャラとは何ぞやと、不思議に思う方もいることだろう。スチガンには、メーカーによるそれなりの設定が存在し、優れたメカデザインもなされていた。しかし、あえてそれらを無視し、オリジナルの設定を差し挟むことにしたのである。何故か?
 それはスチガンには存在していない、しかし同人ゲームには必要不可欠な、ある要素を取り入れるためだった。客の購買意欲を煽り、販売の促進を見込める要素…つまりは女の子である。
 主人公を女の子にする。これは誰が決めたわけでもなく、一種暗黙の了解的不文律だった。そこからタイトルが派生し、当字が付せられる。この辺りは誰のセンスによるものか…今となっては闇の中だが、恐らくは日常馬鹿会話の中で、突発的に生まれたものだろう。
 何はともあれ、こうして鋼鉄銃娘は誕生した。

 こうしたポッと出の設定を柔軟に引き伸ばしていくのは彼らの得意技であり、御褒美CG、音声演出など、原作には見られない要素が着々と添加されていった。鋼鉄銃娘は美麗なCGの衣をまとってステージクリア画面内で躍動し、更に魅力的な(音源の都合でちょっとしわがれてしまったけれども)声も備えたのである。
 まさにこの点で、ガンにゃんは本家スチガンを超えたと言っても過言ではあるまい。もっとも、だから何がどうなるというわけでもないのだが。


98的限界への挑戦
 原作に対して、キャラ設定ではねじれの位置を突っ走る一方で、ゲームそのものは極力近づけるよう配慮がなされた。しかし、所詮はPC98同人ゲーム…どんなに努力しても縮まらないマシンスペックによる格差はあった。そこは努力と創意工夫で乗り越えるしかない。

 操作系として、ガンコンはマウスで代用された。手前味噌だが、これは非常に優れたアイデアだろう。ゲームのやり過ぎでマウスが逝ってしまうという弊害はあったものの、これによりフルマウスオペレーションが確立されたのだ。マウスにて照準を上下左右に動かし、左クリックでショット、右クリックでミサイルを発射する。K林には不評だったものの、ガンシュー特有の繊細かつ高速な照準の動きと優れた操作性が、見事に再現されていた。これをキー操作で実現していたら、臨場感に欠けた味気ないものになってしまったに違いない。
 こうした工夫に伴うプログラミングの苦労は計り知れない。当時を振り返る限り、E本の顔色がいつも優れなかったのはこのためではないだろうか。

 一方、ゲーム画面製作作業も難航していた。とにかく資料が足りないのだ。NGをメインに、ゲーム雑誌の切り抜きなど、八方手を尽くしてかき集めたわずかばかりの資料を参考に、粗ドット・16色制限に悩まされながら、なるべく見やすい画面構成を模索した。また、敵キャラの動きを表現するために、各々3〜5パターンのデータを作成しなければならず、作業時間はズルズルと長化していった。

 画面の展開や敵キャラの動きなどは、生字引とも言えるスティールガンナーズの意見を参考に再現されようとしていた。しかし、この方法はすぐ壁にぶち当たってしまう。敵キャラは、出現後のごく短い期間しか彼らの記憶に収まっていないのだ。何故なら、画面内に現れる敵キャラは彼らに倒される儚い運命にあり、その後の動きまではフォローすることができなかったのである。
 このままじゃ駄目だ! 誰彼ともなく閉塞感が高まってきた頃、現状を打開するために、E本がビデオカメラを片手に立ち上がった。思い切った行動に出る時が来たようだ。


強行偵察部隊出動
 ビデオカメラを携えたE本とスティールガンナーズが向かったのは、当然のことながらゲーセンだった。まずは大量の100円玉を用意する。投入するのは勿論スチガンだ。ガンナーズの一人がオモムロにゲームをスタートさせた。E本は画面正面でカメラを構えて微動だにせず、そこに起こる全ての事象を余すことなく録画していく。残った面子はゲーセン店員の目から彼らの暴挙を隠匿すべく、ギャラリーを装って人垣を形成する。奇異ではあるが、完璧なフォーメーションだ。(もっとも、店員の目を欺くことはできなかったようだが。警告をくらうこともなかったのでよしとしよう。)
 画面には、普段の見なれた展開とは全く異なる情景が映し出されている。こちらからの攻撃は最小限に止められているため、敵キャラ達はここぞとばかりに活き活きと画面内を跳梁跋扈している。耐え兼ねてプレイヤーが弾を放つと、E本から「撃つな!」という叱責が飛んだ。(この模様はビデオ音声を通じてしっかりと録音されていた。)無茶な話である。
 敵の銃撃にさらされるため、HPゲージはあっという間に減っていく。ゲームオーバー…すかさず100円投入してコンティニュー。こうして、ゲームクリアまでの延々数十分、同じプロセスが繰り返され、スチガンの全てを納めたテープがめでたく完成した。…いいのか?

 数日後、ダビングされた貴重なテープが、ガンにゃん製作者達に配布された。そのものズバリ、この上ない資料である。再生・一時停止が繰り返され、その都度そこから何かが吸収反映されていった。

 こうして作業は再び軌道に乗った。ふと外に目をやれば、季節はすでに晩秋から冬への移ろいをみせている。後は時間との闘いだ。タイムリミットは年の暮れ。とにかくひたすら走り続ければいい。

→ つづく