■ 雑文.10:鋼鉄銃娘製作記 II (1998.11.20) ■

〜 ガンにゃんを創った男達 〜

電脳荒野のガンマン達
 シューティングゲームを得意とする人のことをシューターと呼ぶのならば、ガンシューティングを得意とする人を、ガンシューターと呼んでも差し支えないだろう。
 ここに、そう呼ばれるべき一人の男が彗星の如く姿を現す。名をK林という。彼の才能が開花したのは、ナムコ謹製スティールガンナーにおいてであり、それまでゲームセンターに立ち寄ることのなかった彼が、足繁く通うようになったのも、これを契機としていた(ように見受けられる)。
 何故に、彼がガンシュー道へ足を踏み入れたのかは定かではないが、聞けば恐らく「おもしれぇじゃん」といったストレートな回答が得られることだろう。

 彼曰く、「俺はゲーマーじゃない、ゲームラバー(ゲームを愛する者)なんだ…」けだし名言である。確かにあらゆるゲームに精通しているわけではなく、極所的にガンシューのみに固執するあたりに、そう言える資格があるのではないか。ちなみに彼がガンシュー以外に手を染めたゲームは、プルリラを除いて記憶にない。(近頃はどうか…分からないフリをしておくが。)

 彼の情熱的なガンシュープレイにはギャラリーまでをも引き込む魅力があった。彼の影響を受けて多くの若者達がガンシュー道を志し、電脳荒野に足を踏み入れたことも、決して不思議なことではないのだ。当然の1コインクリアのみならず、トリガをパチることによる命中率アップや、逆に画面内の物体をどこまでも破壊し尽くす試み等、解説つきでゲームが進行していく様は、あたかもアトラクションの司会進行役とでもいったところだった。

 こうして、身内周辺で突発的にスチガン愛好会的コミュニティが形成された。一日一膳ならぬ、一日1(コイン)クリアを日課とする彼らを、人はスティールガンナーズと呼び、彼らの足跡は常時ゲーセンのスチガン得点ランキングに刻まれていた。当然のことながら、トップランクには常にK林による不動の『KOB』3文字が輝いていたが、そこを見ることによって、その日、誰がゲーセンに来たのか分かるほどだった。
 裏を返せば、彼ら以外にスチガンを入念にプレイする客は希で、得点ランキングに顔を出せるまでやり込む者は実に希少だったと言える。そもそも、ガンシューというゲームジャンル自体が、素人向のとっつき易さはあるものの、一般シューターに省みられることはまずなかったのである。
 しかも世間はストII人気の最盛期。林立する対戦台に背を向け、ひっそりと店内の片隅に佇む筐体に立ち向かう彼らの勇姿は、大勢に立ち向かう弱小レジスタンスよろしく、見る者の涙を誘うのだった。

 さて、それではスタジオ玄米茶主要面子の中で、スティールガンナーズに入隊した者がいたかというと、実はいなかったのである。しかしながらスチガンの、ひいてはガンシューの奥深さは嫌が応にも刷り込まれ、皆の興味の対象として浮上してきていた。


スティールガンナー
 ここで、一部若者達を虜にしたスティールガンナーというゲームについて、解説しておこう。
 メーカーはナムコ。2挺の拳銃式コントローラとディスプレイ画面一面を備える大型筐体マシン。従って最大同時プレイ人数は2人となるが、強引に1人で二挺拳銃として楽しむという手もある。
 ゲームは全4ステージに分かれ、空港・研究所・港・市街地と話が進む。ステージ間のナレーションによって状況説明がなされ、一本筋の通ったストーリーが形成されている。

 基本的な操作は画面内に表示される照準をコントローラによって上下左右に動かし、出現する敵キャラクターを撃ち倒していくというもの。敵からの攻撃は避けることができないため、撃たれる前に撃つのが鉄則である。被弾するとHPゲージが下がり、これが0になるとゲームオーバーとなる。HPの回復法は2通りあり、一つはステージ間ごとに前ステージの命中率に応じた自動回復、もう一つはゲーム画面内に時折現れる一般人を無事に(誤射することなしに)画面外に逃がしてやることである。
 弾数制限は特にないが、前述したように命中率と回復度が密接に関連しているため、無駄弾は少ないに越したことはない。また、特別アイテムとして、各面ごとに4発ずつ、画面全領域にダメージを与えるミサイルが支給される。

 ゲームの最大の魅力は、破壊欲求を満たしてくれる演出と、スピード感あふれる画面スクロールである。横方向のみならず、視界前方−画面奥方向への展開はスリルと爽快感を同時にもたらし、自機が高速移動中であることを実感させてくれる。それと同時に、各ステージマップに奥行をもたせることに成功しており、且つ動きが単調にならないような工夫が随所に凝らされている。特にステージ4はその真骨頂と言えるだろう。
 また、各ステージの最後にはボスキャラが控えており、クリアへの難関として立ちはだかる。ここはミサイルの使い所でもあるのだが、技術が熟達すれば使わずとも何とかなることを、K林が証明している。

 なお、ゲームの難易度は不明である。あまりにもたやすくクリアされるのを目にしていたため、それほど難しくは見えなかったが。いかんせん、筆者はプレイしていないので。
 とにかく、演出・CG・スピード感、どれを採っても時代の最高水準にあっただろう。そのレベルは続編スティールガンナー2に継承されたが、1のインパクトが余りにも強かったためか、それほどセンセーショナルなものにはならなかった。


KUNIソフト
 さて、ここで話はがらりと変わるが、メタルホークアウターフォーミュラというPC98向同人ソフトを御存知だろうか。両者とも、独自の拡大・縮小ルーチンを取り入れた、スピード感あふれるアクションゲームである。当時のBASICマガジンに、それぞれ紹介記事が載せられていたことを、記憶している。
 これらのソフトを製作したのは、KUNIソフトというサークルの方々なのだが、PC98という制限された環境下でのゲームの完成度には、まさに目を見張るものがあった。それは斬新という言葉を用いる他なく、プログラミング知識のない者でも、その独特な画面展開にただ感心したものである。(ちなみに、試作と言われたゲンソリスも、素晴らしい出来栄えだった。)
 こうした立派な同人ソフトを目の当たりにして、我々とはそもそもソフト製作に対する意気込が違うのだなぁと、つくづく感じたものである。しかし、所詮はヨソ様のことで、別に自分達がどうこうしなければという向上意欲が湧いてくるわけではなかった。

 ところが巡り合わせというのは不思議なもので、遠い世界の話だと思っていたものが、にわかに急接近することがあるのだ。どのようなコネとツテをたどったのか、詳しい経緯は全く不明なのだが、ある日E本宅で雑談をしていたところ、不意に、彼がKUNIソフトの方々と知り合いになったようなことを口にした。そして、彼独自に拡大・縮小ルーチンを作成してみたところ、スチガンをPC上で再現することができるかもしれないと言うのだ。これこそまさに青天の霹靂。
 確かにスピード感が重要視されているという点では、両者に共通する部分はある。しかしにわかには信じがたい話だった。これはE本のプログラミング能力を疑っていたわけではなく、我々スタジオ玄米茶の活動内容からすれば、スチガンがあまりに偉大過ぎる目標だったためだ。畏怖の念が強かったとも言えるだろう。
 それでもとりあえずは彼の要求に応じるままに、コンテナや燃料タンクなどの簡単なオブジェクトデータを作成し、何らかの結果が出るのを待った。

 数日後、彼の部屋のディスプレイに映し出された光景は、コンテナが画面奥から徐々に拡大しながら、画面手前へと迫ってくる画像だった。ただそれだけのことなのだ。だが確かに、ほんの瞬時の断片的なものでありながら、そこにスチガンに結びつく何かが垣間見えたのである。
 イケルかもしれない、そうした実感が初めて心に芽生えた瞬間だった。

→ つづく