■ 雑文.9:鋼鉄銃娘製作記 I (1998.11.15) ■

〜 ガンにゃんを創った男達 〜

スタジオ玄米茶発足
 時は1990年代前半。
 唐突ではあるが、某大学のサークルメンバー数人によって、スタジオ玄米茶という同人ソフトサークルがなし崩し的に結成された。設立の意図は定かではない。ただそこに、プログラムを組める男がいて、絵を描ける男達がいて、ついでに暇な男達もいて…そんな奴等がそこはかとなく集まっただけのこと。唯一の共通点は、皆PC98もしくはその互換機を所有していたというところか。

 まずは簡単に、メンバーをさらってみよう。(敬称略)
 リーダーS藤、残念ながら彼は後に脱会してしまうが、彼の提唱によって、『スタジオ玄米茶』は生まれた。独特のノリで修羅場を突破しつつ、BGM、CG作業を担当。
 プログラマE本、S藤に代わって後にサークルの切り盛りを引き受けることになる。共同作業場所として彼の私室を利用。普段は緩慢な溜まり場でしかないところ、年に2回ほど修羅場と化す。
 アートワークK本Y口。それぞれ個性際立つ御絵描師。ペン画からCGまで、幅広くこなす実力を持つ。同人ソフトの売れ行きにおけるCGのウェイトは大きいため、筆達者な2人は貴重な戦力となる。
 S藤の友人N川。CG描きの人手が足りず、全くの部外者に関らず不幸にも巻き込まれる。
 ドッターY本…筆者である。何となく面白そうなので参加。
 以下心強い助っ人の面々として、K林M野H田W部、そしてサークル後輩達


幕張冬の陣
 同人ゲームを作って、コミケで売ろう! 言いだしっぺは、やはりS藤だったか。今となっては定かではないが、とにかく不意にそんな気風が高まった。それはとある秋の日のこと、太陽が優しい日差しを投げかける中、男達の闘志がイヤな色に燃え上がった。

 照準を次期冬コミにあわせ、それぞれ仕事の割り当てが決まる。
 記念すべき処女作タイトルはTea Break。奇しくもどこぞの18禁漫画に同名のタイトルがあったとかなかったとか…。内容は世間的に言うミサイルコマンド+御褒美CGという簡単なもので、5'FD1枚+コピーマニュアルを、プリントごっこでタイトル印刷した茶封筒につめて販売した。パッケージ(封筒)イラストはK本が執筆。大量に刷られたおネエちゃん柄の封筒を、E本の部屋床一面に並べて乾かす様は、かなりイヤ〜ンな感じを醸していた。ちなみにインクの色は蛍光ピンク+セピアだったように記憶している。

 初の試みだったにも関らず作業は滞りなく進み、多少のゆとりを残して、コミケ当日を迎えた。場所は幕張メッセ。寒風吹きすさぶ中を、群集にもまれながら、FD100枚入りの箱をつんだカートを転がして会場入りする。
 イベント開始から終了までは、まさにあっという間だった。混濁したあの場所特有の雰囲気に気圧されて、記憶も定かではないようだ。まぁ、それなりに売れたらしい? 何故覚えていないのだろうか…それは、浮かれてどこかにいってしまい、全然売り子をしていなかったからだと気づく。
 3枚のプラチナチケットを分かち合ったE本・K本・Y本の内、スペースに残ったのはE本のみだったのだ。遅れ馳せながら、彼の頑張りを称えよう。
 当然客達の反応もよく分からなかったが、ゲームの内容に関する質問もあったという。そうか! 御褒美だけじゃ、駄目なんだ。ゲーム自体もしっかりしたもの作らなきゃ。

 …それはまだ、古き良き時代のお話。
 熱く燃えた冬が終わり、Y本の得た報酬はFD20枚。まあよしとしよう。


晴海夏の陣
 そして迎えた次の夏。一発屋で終わることなく、スタジオ玄米茶は再び活動期に入った。前回のコピーマニュアルに記載した次回予告『AVG』の製作に向けて。エイリアンの劇場公開ポスターを彷彿とさせる、K林渾身の予告イラストに恥じないものを提供するのだ。

 と思いきや、作業はまたも御褒美CG描きから始まっている。おや?
 内容は聞かされていないものの、どうやら今回もステージクリア性のアクションゲームになるらしい。作業分担は前回のものを踏襲していたので、それぞれが出来ることから始めていく。専らCG部隊の方が個人レベルで作業できる分、進みがいい。(人によっては必ずしもそうではないが…)
 ゲームの内容については、その充実を図るべくプログラマサイドで検討。そんなところに、新たに強力な助っ人が参入する。E本の友人プロプログラマ、Ab.。これでソフト製作側は盤石の体勢が整ったと言えるだろう。

 時間は過ぎる。ゲームのコンセプトが決定(COM対戦型ドッグファイト)し、タイトルも安直ながら闘犬と決まる。CGも徐々にアップ。その他アイコンなども製作され、ゲームとしての体裁が日を追って整ってくる。この頃になると、E本宅にはメンバーが入れ替わりで入り浸るようになる。昨冬と同じ光景だ。
 ある程度の形になったところで、テストプレイ。対戦のレベルがあがってくると、COMが強くなり過ぎるきらいがあったものの、オプションアイテムを充実させることでバランスをとる。この辺り、ちゃんとゲームとして練り込まれていて、前回の教訓を活かすべく、努力の跡が見られると思って欲しい。
 さて、前回同様にパッケージ/マニュアルを作成し、いよいよマスターアップ。後はディスクをコピーして、数を揃えるだけ。マニュアルには次回予告として『RPG』がうたわれていたが、誰もがページの穴埋め程度にしか考えていないようだ。こうしたいい加減さを失わない辺りに、同人ソフトとしての自己主張が含まれていると言える。楽しんで創っていくという前提を忘れてしまわないように。

 イベント当日。会場は晴海に戻り、今回はチケットを貰えなかった。働かざる者に見返りは無いというわけだ。正しい判断であると言えよう。選ばれし3人に現場の管理を任せて、あぶれた者は三々五々スペースにやってくる。売れ行きはまぁまぁか。
 今回の報酬は現金支給。随分な進歩だが、額は人によってまちまち。隣の芝生は今日も青いのだ。
 こうして熱く燃えた夏も過ぎ行く。

 そんな中で、ガンにゃん誕生の兆候は、徐々にだが芽吹きつつあった。

→ つづく